福井から情報発信 山崎隆敏さん
電源三法交付金や核燃料税をありがく信じこんできた福井県民 山崎 隆敏
次期衆議院選で福井2区から立候補予定の斉木武志氏は4日の記者会見で「原発関連交付金は、福井に欠かせない。原発が止まっている現状で交付金は減っており、基準を見直さなければならない」と主張。
また「規制委の安全審査を通り、安全安心が確認されたものがあれば、再稼動は進めるべきだ」と述べたそうです。(朝日新聞福井県版6月8日)
斉木氏のこの認識は間違っています。なぜなら、福島原発事故の前年(2010年)に交付された電源三法交付金は、県・立地市町・周辺あわせて216億円でしたが、2014年には300億円と大幅に増えています。
私はこれを福島原発事故がもたらした「焼け太り」と評しています。また、2014年度の福井県に交付された電源三法交付金198億円のうちの122億円は、原発がなければ使う必要のない事業に使われています。
そのち一番大きなものが、原発事故に備えた防災道路やトンネルの建設費など90億円です。
福島原発事故が起きた直後は、国内のマスコミも自民党の政治家でさえ(例えば石破茂氏)深い反省の弁を表したものです。
2011年3月11日以降、日本の常民の国家観や政治意識、あらゆる価値観が大転換するのではないかと私は期待しましたが、残念ながらそうはなりませんでした。
何が何でも原発を動かすために、「原子力防災」と称して莫大なお金を垂れ流して土建業を潤し、政治家の口をふさぐ。このお金の流れが、現実の政治を動かしています。
福島事故以前から私たちが、「原発は最大の公共事業」と批判してきた所以です。
かたや私たちも、たとえば県や自治体の原発事故避難計画の不備を突く際に、本質的な批判、問いかけを行う必要があるでしょう。
近所のお百姓が私に語ってくれました。
「山崎さん。福島のような事故が起きたら、わしら百姓は田畑を担いで逃げることなどできん。
原発さえ止めてくれたらいい。避難計画など要らん。」
原発事故が起きれば、避難道路が整備されても汚染された故郷には戻れなくなります。
そのことの悲劇性を第一義に訴え、私たちは避難計画の実効性を望んでいるわけではないこと、原発さえ止めれば無駄であるような公共事業に多額の税金が投じられることを批判すべきでしょう。
原発をなくしたいと真に願う県民は、このお金の流れを断ち切り、矛盾の円環から抜け出す選択をしたいものです (とは言っても工事はどんどん進んでいますが)。
政治家はよく「核燃料税は、県の財政を支える貴重な自主財源」と口にしてきました。
しかし核燃料税は、「放射能測定、温排水の影響調査などの安全対策や原発立地によって生産活動の一部が制約される地域住民の生業対策、緊急避難のための交通体系の整備(避難道路・港湾整備)など原発があるために必要となった財政需要に充てる」財源なのです(『県税1000億円の歩み』1992年)。
私は1994年に、「核燃料税を県の財政を支える財源と呼ぶには無理がある」とする小論『原発の総括-県民の側からの』をまとめ、毎日新聞社から「郷土提言賞」を受賞しました。
そこでは「原発があるために必要となった財政需要として1981~86年に331億円が支出されたが、そのうち192億円が核燃料税で充てられたものの、不足分139億円は一般財源からの持ち出しとなっていることを批判しました。
今回、核燃料税の使途の現状を調べるため、県庁の情報公開室へ何度も出かけましたが、一般財源として各課に配分されているため、詳細を記した一覧はないそうです。しかし、たとえば鹿児島県は、核燃料税の使途についてその明細を公開しています。
それによると、平成25~29年度の5年間の核燃料税の総額21,2億円のうち17,7億円 (83%)が、原発がなければ必要のない仕事のために使われていることがわかります。
内訳は、原子力安全対策費(人件費・防災対策費など)に1億3,280万円
、環境保全対策費(環境放射線監視測定費・温排水対策費)に5,450万円、
民生安定対策費(非常緊急用道路整備事業費) に15億8,690万円。
合計17,7億円。
また、福島県の2010年度の当初予算では、核燃料税44億3,000万円が計上され、その70%にあたる31億円は県が放射線測定や防災ヘリコプターの維持、避難用の道路整備、被曝医療を担う医大病院の運営など、原発がなければ必要のない費用に充てられました。
もちろん、原発を止めても、放射線監視などの仕事は半永久的に続けなければなりませんが、原発を停止すればほとんどは無用になるお金です。 馬鹿馬鹿しいと思いませんか。
それから、原発立地市町の財政が窮屈になってきたのは、福島原発事故のかなり前から進みつつあった症状です。この点も注意して見ておく必要があります。
私に与えられていた紙幅がつきました。立地自治体の財政や地域経済について書いた小論ができあがっていますので、早急に冊子にまとめて皆さんに読んでいただきたいと思っています。