2018/12/7

東海第二原発の20年運転延長何が問題か「12/8()山崎ゼミ」 

 |  耐震性評価の欠落、ケーブル・火災問題、 

 |  津波による漂流物、炉心安定性と原子炉停止問題など多数 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表) 

 原子力規制委員会への「行政不服審査法に基づく審査請求」の募集が行われ、期間がとても短かったのですが、個人80名、4団体と多くの方々に連名していただき、大変ありがとうございました。1127日に郵便で送付されました。 

 この次の予定としては、原子力規制委員会に出向いて意見陳述し、かつこのことを多くの人に知ってもらい、そしてできるだけ早く審査させる(前は1年半もかかった、沖縄辺野古の場合と全然違う)ことを考えています。 

 今回の「山崎ゼミ」では、「審査請求書」をベースに問題点を整理してお伝えします。 

 審査請求書は当日配布します。次に審査請求の概要を示します。 

 ただし今後も修正が入る可能性があることを了承願います。 

 

 東海第二発電所の審査請求概要  

 一 審査請求人請求申立人 総代:山崎久隆(たんぽぽ舎)、披田信一郎(東海第2原発の再稼働を止める会)、木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク) 

 二 審査請求に係る処分の内容 

 東海第二発電所の発電用原子炉の設置変更(発電用原子炉施設の変更)の許可処分(平成30年9月26日、原規規発第1809264号)および東海第二原子力発電所の工事の計画の認可処分(平成301018日、原規規発第1810181号) 

 三 審査請求に係る処分があったことを知った年月日 設置変更許可処分        2018年(平成30年)9月26 工事計画認可処分   2018年(平成30年)1018日 

 四 審査請求の趣旨及び理由 

 「二記載の設置変更許可処分を取り消す」との決定を求める。 

 「二記載の工事計画認可処分を取り消す」との決定を求める。 

理由1 東海第二原発の危険性と原子力規制委員会の審査

理由2 スタビライザー耐震不合格~耐震性評価の欠落 

理由3 情報公開の拒否~原子力規制委員会設置法と国会決議に関する違法性 

理由4 ケーブル・火災問題 

理由5 津波による漂流物の問題 

理由6 炉心安定性と原子炉停止問題 

理由7 深層防護第5層の責任 

理由8 東海第二原発の再稼働と日本原子力発電への資金支援 

理由9 東海第二原発の安全性にとって東海再処理工場など周辺施設の同時被災の影響を考慮することは必須課題 

 五 処分庁の教示の有無及びその内容

 原子力規制庁法規部門の担当に、行政不服審査法の改定内容など審査手続きについて教示を得た。 

 六 審査請求の年月日 20181127日 

 七 口頭意見陳述会の開催 

 行政不服審査法第31条の規定に基づいて、口頭意見陳述を求める。 

この口頭意見陳述の実施において、本来原子力規制委員会が開催すべきであった公聴会に近づけるため、異議申立人以外にも公開し取材を許可することを求める。 

 八 執行停止の申立て 

 2018・12・3

東海第二原発には耐震性なし     「その2」 

 |  免震装置に重大な欠陥が明らかに 

 |    「欠陥原発の再稼働を認める規制委員会」 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表) 

 

3.東海第二原発に耐震性なし 

 20181025日、衆議院第一議員会館で「東海第二原発の再稼働審査を問う!原子力規制委員会院内ヒアリング集会 その4」が「再稼働阻止全国ネットワーク」「とめよう!東海第二原発首都圏連絡会」の共催で開催された。 

 規制委員会は7月13日の第3回のヒアリング集会の後の9月26日、新規制基準に適合するとの審査書を決定した。 

 東海第二原発は1127日に運転開始40年になるため、今後20年の運転延長も申請している。その最後の審査会合が11月7日に行われ、延長を許可する決定を行った。 

 これに先立ち、1025日に開かれたヒアリング集会では、規制庁から17が出席、原電が規制委に提出した工事計画書の認可申請の補正書や審査書案、それに対するパブリックコメントへの回答などを分析して、主催者側が事前に伝えた質問事項13項目に規制庁が答えた。 

 沢山の問題点が指摘されたが、この場で最も大きな問題としたのは「耐震性の欠如」である。 

 原発の耐震設計に使われる基準地震動(Ss)については、東海第二の場合、数多くの変遷を辿ってきた。 

 建設段階、まだ耐震設計審査指針が作られる以前の1972年設置許可申請時には、わずか270ガルで設計され、その後耐震設計審査指針により380ガル、2006年の指針見直しで600ガル(3・11震災後のストレステスト時点でも600ガルを維持)、新規制基準適合申請時点で901ガル、そして最終的には2014年に提出した補正書では1009ガルにまで引き上げられた。 

 この結果、建設時には余裕があったはずの耐震性能は、大幅に裕度を削られ、最後には基準地震動の揺れで破壊される可能性が極めて高い原発になっていた。 

 地震のような複雑系の理論的予測は極めて困難であることは常識であり、1009ガルが国内で記録されてきた地震の揺れから考えても、過小評価であることは、わずか20年程度の最近の地震観測結果からも明らかだ。 

 特に2007年、新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発で1699ガルの地震に遭遇している。その地震はマグニチュード6.8、国内で最大でもない中規模地震である。

 理論的予測が困難な場合は、これまでに観測された地震動の全てを超える最大値を保守的に採用すべきだ。その値は少なくても4000ガルを下回ることはない。 

 その過小評価された基準地震動に遭遇してさえ、耐えられない部分とは、原子炉圧力容器を上部で支える「スタビライザ」(防振装置)と呼ばれるものと格納容器の間の構造部分だ。 

 このスタビライザの耐震評価値は、393メガパスカルだが、基準地震動の 

発生により生ずる力は実に982メガパスカル。2.5倍にも達するものすごい力(1平方センチメートルあたり9トンあまり)の荷重がかかるのである。 

 これでは変形し破断する危険性が生ずるが、規制委員会に出された評価計算書「上部シアラグ及びスタビライザの耐震性についての計算書」では、繰り返し疲労を計算したら地震による揺れで基準値を超える振動の想定回数は40回、それに対し耐えられる限界の値は48回、その累積疲労係数は「0.834」で1を下回るから合格であるという。

  0.834とは、破壊される終局限界のわずか1.2倍であることを意味している。 

 言い換えるならば地震の揺れが2割増し、あるいは基準地震動に達する地震が2度起きれば破壊は免れない。 

 しかも、その破壊が発生するのは、圧力容器を上部で支える重要構造物だ。 

 圧力容器の相対位置が保てなければ、多数の配管に強い力が掛かり、小口径配管などは瞬時に破断してしまう。特に原子炉圧力容器の真下に取り付けられている制御棒駆動系の配管185本は、わずか直径3センチ肉厚6ミリあまりである。 

 地震の揺れに伴う圧力容器の変位が発生したらたちまち破断してしまい、制御棒は入らなくなる。 

4.欠陥原発の再稼働を認める規制委員会 スタビライザの性能は、原電が作成した書類でさえ耐震性がないことが分かった。さらに破断までの裕度は1.2倍。これは規制委員会自らが「低サイクル疲労に対する裕度は1.5」としている内規にも反している。 自分たちで決めた規制基準を守れないうえ、公開している文書は重要箇所が「白抜き黒枠」で知ることさえできない。

 今回は、消し忘れていた(?)箇所から耐震評価の破綻部分が明確になった。 

 東海第二原発はもはや廃炉にするほかに道はない。 (

      (「脱原発株主運動ニュース」No278 201811月より転載

 2018・12・1

東海第二原発には耐震性なし 

 |  免震装置に重大な欠陥が明らかに  「その1」 

 |    「免震、制震装置の検査データ偽装と原発」 

 |    「免震ゴムもオイルダンパーも偽装」 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)   

 

1.KYB免震偽装と原発  

 1017日、油圧機器メーカーKYBの子会社カヤバシステムマシナリーが製作した免震及び制震装置の検査データで、少なくても1000台あまりの検査データが偽造されていた疑いのあることが明らかになった問題で、数多くの公共施設に続き、原発の関連施設にもこの制震ダンパーが使用されていることが明らかになった。(東京新聞1018日他) 

 検査データが偽造されたのは免震装置のダンパー(緩衝装置)で、円筒形の容器にオイルとピストンが組み込まれ、オイルの粘性により熱膨張などのゆっくりとした動きは許すが、地震の大きな揺れを抑える役割を持っている。 

 原発の内部にも同じ原理の装置は大量に使われ、オイルダンパー(油圧防振器)と呼ばれている。

  現在のところ原発内部の配管やポンプを吊っている装置には使用されていたとの報道はないが、岡原発の非常用ガスタービン発電機6台がある建物の免震装置に使用されているものに偽造の疑いが指摘されている。非常用ガスタービン発電機は、原発が外部電源と非常用ディーゼル発電機 の電源を喪失した際に、冷却用電源を供給する安全上非常に重要な装置だ。 

 2015年2月に敷地の高台40m地点に増設されたもので、高い信頼性と生存性が求められる。ここに性能に疑いのあるダンパーが32台も使われている。 

 要求される性能を発揮できない可能性のある装置が使われていることは、新規制基準の根底を揺るがす問題として捉えるべきものだが、原子力規制委員会は事業者の品質管理問題だとして、真剣に対応していない。 

2.免震ゴムもオイルダンパーも偽装 

 地震多発国で起きた免震、制震装置の検査偽造。何が起きているのか。 

 イ.免震のメカニズムは、建物の地下階に空間を設け、建物を支える柱構造には免震ゴムを挟んで、地面が建物に対して水平方向に動く力を、ゴムの変形で逃がすことで、揺れが建物に伝わりにくくする方法が一般的だ。 

これにオイルダンパーを付けて揺れを押さえると共に免震ゴムの変形を小さくする役割を持たせている。 

 ロ.制震のメカニズムは、建物の各階や大型装置類など重量構造物をささえる構造にオイルダンパーを支えとして設置し、地震の揺れを吸収することで建物の変形を抑制し揺れの影響を低減する役割を持たせる。

 オイルダンパーはピストン構造をオイルの粘性で制御するが、緩すぎても堅すぎても役に立たないので、これを検査で確認し建築基準法に定める規定内に収まるよう調節している。

 粘性が大きすぎてかたくなっていると、揺れが建物に伝わりやすくなり変形や破壊が生じる可能性がある。一方粘性が小さすぎると揺れの幅が大きくなり免震ゴムが破損したり建物が擁壁に激突して大規模損壊に至る可能性が出てくる。 

 免震ゴムについては、東洋ゴム工業が2015年2月9日、検査データを偽装していたとして国交省に「自主的に報告」したことから発覚した「免震ゴム偽装事件」があり、各地の免震建築物に重大な問題を引き起こした。 

 免震ゴムと制震ダンパーは、例えば免震重要棟や緊急時対策所など原発施設にも使用されている。偽装された装置類が使われていないか、全原発を止めて総点検すべきだが、規制委員会はこの問題について自主的対応にまかせて何の指示もしていない。「その2」へ続く 

      (「脱原発株主運動ニュース」No278(201811)より転載